開発日記
2022年8月 真贋判定装置に必要な様々な要素を実験する
HOZANの顕微鏡を試す
2022.08.09
HOZANのUSB顕微鏡を買いました。
もともとははんだ付けなどの実装状態を見ることを想定して作られているのだと思いますが、私としてはICのパッケージのマーキングを見て偽物と本物を見分けられないかと思っています。
まず、手近にあったXILINXのCPLD、XC2C256の表面を拡大してみました。黒いパッケージですが拡大していくと溶岩が固まったようなでこぼこした構造が見えてきます。
マーキングの部分はレーザーで掘ってあるのか平らに削られているようです。
CPLD表面の白い四角の部分はレーザーを何度も走査したのでしょう。縦筋が見えています。この縦筋からマーキングの分解能もわかりそうですね。
彫ってある文字をよく見ると、1本の文字が2回の走査で書かれているのではないかという筋が見えます。
マーキング自体は光の反射加減で非常に見づらいのですが、
偏光フィルタを通すと非常に鮮明に見えるようになります。
偏光フィルタでマーキングが鮮明に撮れるというのが今回の最大の収穫でした。
ただ、この顕微鏡は最大倍率に拡大してみてもぼやけていてμmレベルの構造は見えません。画像自体も8x8ピクセルで塊を作っていて、500万画素が活かせている感じではありませんでした。
下の写真は万能基板のランドの表面です。BMPで保存しているのでファイル保存時には圧縮されないはずですが、8x8のブロック構造が見えています。
このUSBカメラのインタフェースはUVC規格だそうなので、自分でプログラムを組んで非圧縮で画像を取り込めば500万画素が活かせるのかもしれません。
下の写真は私が手半田したコネクタの端子です。
拡大率を上げると暗くなってノイズが目立ち始めます。
端子間隔は0.5mmで、配線の幅は0.1mmです。ブリッジしていそうでしていないのはわかります。
光学的分解能は10μmくらいではないかなと思います。
ハイサイドスイッチの実験回路
2022.08.08
1つの信号ラインに、1.0Vや、1.2V、1.5V、1.8V、2.5V、3.3V、5Vなど多様な電圧を与えるためのハイサイドスイッチの回路を検討しています。
MOSFETでスイッチするとどうしてもボディーダイオードを通じて漏れてくるので、専用のロードスイッチを使います。候補になっているのは、Vishay社のSiP32408、RenesasのSLG59M1563V、TexasInstruments社のTPS22917LDBVRです。
これらのデバイスは逆流防止機能があって、OFFの放電抵抗がないという特徴があります。
いずれも非常に小さいパッケージなので、万能基板で作る前にExcelで実体配線図を描きました。Excelを方眼紙の状態にするのですが、列の幅を0.96、行の高さを9.6くらいにすると正方形になるので描きやすいでしょう。グリッドに固定するためのボタンをツールバーに出しておくとなお描きやすくなります。
実際に作った回路はこんな感じです。
万能基板の上にカプトンテープを貼って、その上に各種ICをエポキシで固定しています。そこからボンディングワイヤで周囲のパッドへ配線を引き出しています。
あまりやりたくない作業です。
結果はどうかというと、Vishay社のSiP32408とTexasInstruments社のTPS22917LDBVRは期待通り逆電圧を阻止してくれました。
RenesasのSLG59M1563Vは期待した動作をしませんでした。
Sに5Vを加えてDに1.2Vを加えた状態で、ON端子がLの場合はS→Dへの逆流は防止してくれますが、ON端子をHにするとDに5Vが漏れ出てきて、非常に危険です。
データシートを読んでも逆流防止についての詳しい説明は書かれていないので、正しい動作なのかどうかはわかりませんが、ON=Lの場合にしか逆流を防止できないのかもしれません。
SLG59M1563Vのことを調べていたらRenesasRulzに同じような疑問を持った人がいたので、書き込みをしておきました。
https://renesasrulz.com/power-management/f/power-management/28316/slg59m1563v-reverse-blocking
ハイサイドスイッチについて
2022.08.02
IC真贋判定装置では、検査対象ICに電源を与える部分でハイサイドのスイッチを使います。
PNPトランジスタで作るか、P-ch MOSFETで作るか、アナログスイッチで、専用のICで作るか、いろいろな選択肢があります。
P-MOSで作る場合、電源は下の図のような回路で与えます。
上の図ではPIN1~PIN3までしか書いてありませんが、最大のBGAの場合、これが1500個くらい並ぶわけです。
ピンにぶらさがったP-MOSFETのどれか1つをONにすることで1.0V、1.8V、3.3Vのいずれかの電源を与えることができます。
しかし、P-MOSだとFETの中に寄生ダイオードが入っているので、うまくいきません。
電位差が0.8VくらいあるとOFFしているFETの寄生ダイオードから回り込んできて低い電圧の電源電圧が上昇してしまいます。
これは危険です。
こういう回路を作るための専用のICがあるかというと、あるんですね。
DigikeyでSiP32408とか、TPS22916Bとか、SLG59M1551Vなんていうのが見つかりました。
「PMIC - 配電スイッチ、負荷ドライバ」
というカテゴリで1mm角以下のICがいっぱいでてきます。
こんな小さいのに2Aとかをスイッチできて、しかも1個100円以下。
1500ピンのBGAをコントロールするには6000個必要なのですが、6000個買っても20万円未満です。
これで超クロスポイントマトリックスが作れると喜んでいたのですが、こういった電源ICには逆電流保護の機能があるものと、ないものがあるようでした。
下の図はSLG59M1551Vの内部等価回路です。
あー、だめですね。
これだと逆流してしまいます。
しかも、スイッチがOFFになったときに放電用のFETがONしてしまう構造なので、使用しない電源ピンがGNDに200Ωくらいの抵抗で接続されてしまうことになります。
これでは私の目的には使えません。
TPS22917というのもあって、これは逆流防止をしてくれて放電Rがないのですが、逆電流を500mA流さないと防止回路がONしないそうです。
DigikeyでこういったICを探したところ、「逆流防止機能あり」で「放電なし」で「1.0Vから使える」という至れり尽くせりのICを3~4種類見つけました。
逆電流素子回路がそれぞれ独自の実装がされているみたいで、少しずつ求めているものとは異なっていました。データシートに乗っていない部分が実際にどうなのかわからないので、Digikeyで購入して実験してみることにします。
半導体真贋判定装置の構造
2022.08.01
半導体真贋判定装置では、1つ1つのピンをGNDやVCCに接続することができるのですが、VCCは少なくとも3種類必要であり、非常に密度の高い基板になってしまいます。
また極小のFETを並べる構造のため、基板の歩留まりも悪くなってしまうことが想定されます。
そこで、数十チャネルの規模の電源をモジュールを作り、
これを下の図のようにベースボードに敷き詰める構造にすることにしました。
この敷き詰め方だと密度が全然足りなくて、これを8階建ての構造にします。
4×4×8で128枚の小さなモジュール基板で電源を与える構造になります。
ただし、これもスマートではないので、下の図のように立体的に重ねるのも素敵かなと思います。
ノートパソコンの中のDIMMモジュールのように三次元的な構造になります。